考え、行動する日々

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TED「愛とは、誰かのおかげで自分を愛せるようになること」

TEDという動画をご存知でしょうか。

TED(Technology Entertainment Design)の略で、「ideas worth spreading(広める価値のあるアイディア)」という考えのもと、世界中の様々なプレゼンターの講演を配信している非営利団体です。スティーブ・ジョブスやミッシェル・オバマビル・ゲイツなど多くの著名人が登壇しています。

 

今日ご紹介するのは、TEDx Kyoto 2012での作家、平野啓一郎さんのプレゼンです。

タイトルは「愛とは、誰かのおかげで自分を愛せるようになること」。

印象に残った内容と感想を書きます。

 

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・自分を愛する事(自己愛)について

平野さんは昨今の悲しいニュースなどに触れ、自分を愛する事について考えています。他人を愛するということに比べて、自分を愛するということについて積極的に語られていないのが現状。その理由として、我が身が可愛いという事は自明で敢えて自分を愛すべきという必要がないということや、自己愛というと、ナルシシズムと受け取られる面もありますが、平野さんの言う自己愛とはそういった事ではないと否定します。

 

・自分を愛する必要性

人生で辛い時や苦しい状況には、最後の最後に人間は自分自身を自分の責任で、自分の面倒を見るつもりで自分を愛さなくてはいけないと、平野さんは自分を愛する必要性を明言します。平野さん自身が人生の中でそうのような状況に何度かなり、自分を愛さなければいけないと思われたという事です。

 

・自分を愛する難しさ

愛する自分とは一体どんな自分なのか?

平野さんはずっと自分自身の事がよくわからなかったそうです。いい事をして人から感謝されれば、「俺は根はいいやつなんじゃないか」とほっとされたり、逆に人を傷つけてしまえば、「自分は本質的なところで冷酷なのではないか」と自分にひどく失望することもあったそうです。自分を何から何まで知り尽くす事で、誰かを愛するより、自分を愛する事が難しいのではないか。いい事も悪い事もまるごと自分を好きだと言えるのかと問いかけます。

 

・色々な自分がいる

自分を好きになるためには何か根本的な考え方の変化が必要だと思った平野さんは、いい時の自分も悪い時の自分も全部自分の姿である事を受け入れる事から始めました。そして、なぜ一人の自分がそんな風に良かったり悪かったり変わるのかをということを考え、結局、対人関係の中で相手次第、場所次第だという結論に至ります。おばあさんと話される時はリラックスし、ビジネスの場ではシビアな顔をする。それぞれの自分は随分と違います。そして、自分の事を全体的に愛するということは難しいかもしれませんが、誰かといる時の自分は好きだという事は実は言えるのかもしれない、そしてそれはそんなに難しい事ではないと平野さんは言います。

 

・他者を通じた自己愛

愛とは誰かの事を好きになる事ですが、平野さんはそれに付け加えて、愛とはむしろ他者のおかげで自分を愛せるようになる事と考えます。誰かから愛されればそれはもちろん嬉しいのだけれど、あなたのおかげで自分が好きになれたと告白されれば、自分の存在がそんな風に他者の存在を肯定させていることには、感動的な喜びがある。たくさんの人に愛されていなければ生きていけないような気がしますが、好きな自分の数を数えれば、2つや3つあれば、そこを足場に生きていける。5つや6つあれば十分かもしれません。自分を愛するとは、誰かのおかげで、他者を経由して自分を好きになれる。そしてだからこそ、他者を愛するのではないかと平野さんは結論付けました。

 

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平野さんは「分人」という造語をつくられています。分人とは、個人における個性はひとつではなく、対人関係に応じて様々な自分を生きているという考え方です。確かに人にはいろんな面があります。それが、対人関係によって異なるという考え方は確かにその通りだなと思います。

私は一緒にいて、無理をしなくてよく、感じたままの振る舞いができる相手が好きですね。一番自分がラクですし、ラクであれば長続きします。生きる上での対人関係で何か悩みができたとき、分人という考え方はとても役立ちそうです。