考え、行動する日々

何事にもとらわれず、広く、自由に。

全てを許容する世界ーざんねんな動物と一発屋芸人

「いろんな人がいるんだ、全部いていいんだ。」ー動物学者・今泉忠明さん

「意味がないとダメなの?」ーお笑い芸人・山田ルイ53世さん

 

NHKの「達x達」という番組で動物学者の今泉忠明さんとお笑い芸人の山田ルイ53世さんが対談されました。

私は今泉先生の監修された「ざんねんないきもの事典」が大好きです。18年のこどもの本総選挙で第1位だったそうです。大人気ですね!今回の対談では今泉先生はもちろん、山田さんのお話もとても興味深く、心に響きました。特に印象に残ったところをご紹介します。

 

・信念と執念で大きな結果を残す

今泉さんは動物学者である父親のお手伝いで野生動物を触れ合う内にフィールドワークの魅力にとりつかれ、大学卒業後も就職せず、フィールドワークを続けました。生活費はアルバイトで稼ぎ、合間に山でのフィールドワーク。フィールドワークでは机の上で考えているだけじゃなく自分で体験したものも入っていくので欠かせない。「今に見てろ、頑張るぞ」という強い気持ちで活動を続け、二年間の地道な現地調査の末に日本で初めて絶滅機種のニホンカワウソの撮影に成功します。真っ暗な中、石がカランと音がしたことで「来た」と確信し、シャッターを押したそうです。本当に地道ですね・・・ものすごい執念だと思いました。

その後は国の特別天然記念物イリオモテヤマネコの調査にも参加しました。その中でネコ科の研究を通してわかったことが、母猫がこどもをしつけて、そのしつけがないと生きていけない。それは人間も同じだということです。動物学をやっていくと人間の事に結びついている。それが面白いのだそうです。

 

・ざんねんの定義とは

動物の進化についてはよく研究がなされますが、進化から落ちこぼれた話はありません。進化は良いという面だけではなく、進化には両面があり、進化は退化、進化により置いてけぼりになる欠点があります。そこにスポットを当てて書かれたのが「ざんねんないきもの事典」。ざんねんって言われたっていい、進化しなくたって、ひっそり、自分が頑張って生きていればいい。と今泉先生は優しく言葉をつなげます。

例えば、パンダが食べているササはほとんど栄養がありません。本来は肉食動物です。ではなぜササを食べるかというと、大昔に生存競争に負け、生き物がいないような高山での生活を強いられて笹の葉を食べて飢えをしのいだ修正が残っているから。かわいいけど、ササを14時間食べ続けるという大変な目にあっています。適してなくても生き延びる。適しているものが生き延びるというのが必ずではなく、それがざんねん。なのだそうです。

 

 

・引きこもりは誰でもなりうるもの

山田さんは学業優秀で進学校に進むも、中学二年生の時から六年間引きこもりました。

きっかけは、通学途中で大をもらしたこと。優等生だというプライドが邪魔をし、次の日から登校できなくなりました。引きこもりを脱したのは二十歳の頃。同級生が成人式を迎えることで、まわりに追いつけないと焦り、大検を受け、愛媛の大学に進学しました。山田さんはご自身の経験から、引きこもりは普通の延長線上にあり、決して特別ではなく誰でもなりうるものだと思われたそうです。ほんと、日常生活でのささいなきっかけで人生を変えることは枚挙にいとまがありませんね。ひきこもりもそういったことの一つなのだと思われます。

 

・山田さんはパンダである

山田さんがお笑い芸人になったのは、負けに負けて辿り着いた道だと分析しました。それが、今泉先生から聞いたパンダの話、生存競争に負けてササを食べざるをえなくなった結果に通ずると感じ、話を聞きながら、「パンダは俺」だと思った。それに対し、今泉先生の考えは違いました。パンダは一番力を出せる場所を探った。負けたわけではなく、勘が良いのだと肯定的な意見です。したがって、シンパシーを感じ、自分がパンダだと思う山田さんも勘が良いという結論になります。考え方ひとつで全然違いますね。

 

・意味がないとダメなのか?全部いて良い。

山田さんは6年引きこもったことで、その間に友達と勉強したり、部活で汗を流し日焼けすることができなかった分、6年が無駄だと話すと、フォローのつもりだろうけど、その6年があったから今の山田さんがいるんですよと言う人がいるそうです。でも、そういう考え方には、息苦しさを感じ、そんなに意味がないとダメなのか?と疑問を投げかけ、無駄を許容する社会が大事であるという考え方を示します。それを受け、今泉先生も、「全部いていい」と意味がないものの存在を力強く肯定しました。そもそも生き物自身に理由なんてなく、周りが意味づけをしているだけと言い切ります。お二人は、「多様性が大事」と同じ結論に至り、対談は終わりました。

 

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ざんねんな動物と一発屋芸人が似ているという着眼点での対談でしたが、なかなか奥深い考え方に触れることができました。金子みすずの「みんなちがってみんないい」ですね。この考え方はひとをホッとさせます。動物学を通して、全てを肯定してくれる今泉先生は素敵ですね。自己肯定力につながる良い対談でした。